中小企業診断士二次試験というのは最初なかなか全体像が見えてこない、つかみどころがない試験に感じていました。
すべて記述式なうえに採点基準もよくわかりません。また一次試験の後時間もわずかしかないというのも大変なポイントでした。
同じように勉強計画の段階で悩んでいる方もいるかもしれません。そこでこの記事では私の受験記録を以下の項目でまとめました。
- 二次試験勉強で使用した教材
- 二次試験の勉強時間
- 事例Ⅳの学習優先度
- 採点基準不明な試験、結局何を頼りにするのがいいの?
- 科目得点イメージと本試験の結果
- 最初(本格的な学習前)はどのくらいできるものなのか
- 得点力(模試や過去問自己採点)の推移
- 事例Ⅰ~Ⅲの学習リスト、意識して取り組んだこと
- 直前期にやったことリスト
一個人の体験のみになりますが、いちおうストレート合格者ですので何かの参考にしていただければ。
使用した教材
通信教材のスタディング
一次試験のメイン教材にしていましたが二次対策もセットになっています。以下公式ページリンク。
「ふぞろい」シリーズ
これのおかげで合格できた「ふぞろい」シリーズです。
全知全ノウ
全知識・全ノウハウ。過去問を一通り回した終盤、頭の引き出しの整理と強化に役立ちました。
一次試験のメイン教材にしていたスタディングは二次試験対策としてはあまり活用しませんでした。とはいえ最初にスタディングで学んだことで、与件文から余さず根拠を拾いあげることの大切さがわかったのはよかったです。
その後ほとんどを「ふぞろい」シリーズで学習(あと事例Ⅳの計算問題集)。
※そのほかLECの二次試験模試(5月)も活用しました。
付属の事例整理シートは使用せず…。
事例Ⅳ対策
事例Ⅳ計算問題集
事例Ⅳの勉強でお世話になった計算問題集。計算が苦手な私が突破できたのはこれのおかげ。
事例Ⅳ全知全ノウ
あまり使った記憶がないですが一応買いました。
あとは教材というより関連書籍として以下を読みました。
- 事例Ⅱ対策→岩崎邦彦氏:小が大を超えるマーケティングの法則
- 事例Ⅲ対策→エリヤフ・ゴールドラット氏:ザ・ゴール コミック版
二次試験の勉強時間(推定)
- 過去問7年分を実施 80分×4×7=37h
- 上記の採点と分析等「ふぞろい」 50分×4×7=23h
- 「事例Ⅳ計算問題集」3周 10h×3=30h
- 「LEC模試」1回 6h
- 「スタディング」の二次対策+一次知識復習 10h
- 全知全ノウ 10h
- その他関連書籍、ネット等情報収集など 10h
上記合計126hとなります。ただものすごく適当なので全く当てになりません。
※特に2番目の採点と分析等はどのくらいの時間をかけたか忘れてしまいました。適当に50分としましたが過去問をやった80分より長くかけた場合もあるかも。
勉強期間はおよそ2か月半なので10週で割ると一週間で12~13時間。一日あたり1.7hくらいということになります。
でも正直スキマ時間も含めてこの倍くらいは勉強した気がします。…ということは上のリストの計算が少なすぎるのか?…
…いやさぼって何もやらなかった日がけっこうあるのです、たしか。で直前期に追い込みしてたので私の記憶の上では一日当たりもっと勉強したというイメージになっています。
10週間でやること
- 週末などまとまった時間が取れる日に過去問演習+「ふぞろい」で採点。(毎週末の土日一日当たり二事例なら試験二週間前くらいまでに過去問7~8年分できる)
- 平日仕事の日はまずは事例Ⅳの計算問題集をコツコツと。あと週末にやった過去問をふぞろいなどでさらに検討。
- やる気があまりない日や気分転換したい時などは関連書籍や全知全ノウ。
- その他スキマ時間を活用して一次知識の復習など。
事例Ⅳの学習優先度
事例Ⅳで確実に合格点+αを確保し、その貯金で事例Ⅰ~Ⅲの不確実さを補う。
とはいえ財務・会計はどちらかというと苦手だったので、時間の割合で言うと事例Ⅳに半分以上をかけるイメージ。また事例Ⅳの内、半分は計算練習に当てるくらい。(実際の勉強時間は計っていないのでわかりません…あくまで配分予定)
事例Ⅰ~Ⅲは最悪勉強しなくてもある程度はとれるので、まずは事例Ⅳを合格レベルに引き上げる。順番を逆にした場合、もし事例Ⅳを学習する時間が取れなくなってしまったら合格の可能性はゼロになってしまうから。
本試験、作戦とは正反対の内訳で合格
+α稼ぐ予定だった事例Ⅳは40点台と撃沈(特に事例Ⅳが難しい年だった)。ただ事例Ⅰ~Ⅲで60点台後半を確保できたのでなんとか合格ラインを越えました。
採点基準不明な試験、結局何を頼りにやればいいの?
私は最初二次対策とはベテラン講師の方などに採点してもらうのが一番いいと思っていました。もっと言うと誰かに採点してもらわないと答え合わせ自体ができないと思っていた感じです。
でも5月にLEC模試の採点結果と添削を受け取ったことで考えが変わりました。やはり自分で試行錯誤して分析できるようにしないとだめだと。人に採点してもらってもどういう方針や基準で採点しているのかよくわからないので逆に手が打ちにくいと感じたからです。
そして出会ったのが「ふぞろい」シリーズです(情報収集が足りなすぎてこの時まで知りませんでした)。
「ふぞろい」は本試験受験者(合格者)の再現答案で何点取れたのか、というのがわかるのが大きな特徴です。
そしてこの本試験での得点こそが唯一の最も信頼できる情報です。
あくまで試験終了後に各自記憶をたどって作った再現答案なので100%の情報ではないですが、主なキーワードはほぼ合っているでしょう。自分以外の受験者の本試験採点のフィードバックが得られるだけでもありがたいのに、それを最大公約数的にまとめてくれています。
予備校や通信教材の解法ロジック・テクニックはおそらくすごいのでしょう。ただそういった業者や講師の方針などは結構個人の考えが強い気がします。それはそれで「いい解答(に思えるもの)」を作れるのかもしれませんが、どのくらい実際の得点になるのか本当のところがよくわかりません。
個人や少数講師のトップダウン(もちろん情報をできる限り集める努力はされているとは思いますが)よりも、多くの受験生のボトムアップのほうがこの試験では信用できると感じます。
また「ふぞろい」が信用できるのは、シンプルにキーワード採点に絞っている点です。変にロジックやテクニック要素が入っていないので誰がやっても実行できますし、またおそらくどんな採点者に当たっても安定した結果がでると思います。
ちなみに私が通信教材「スタディング」の二次対策で学習するのを早々にやめた理由は、本番で実行するのは難しいやり方だなと感じたからでした。
確かにロジックが完璧でいい解答ができあがる方法なのですが、その道のベテランが試験時間外に完璧な答案を作るのと経験値が浅い受験者が限られた時間でプレッシャーの中で書くのとでは違うと思います。
私の場合単純にキーワードを集めていくという「ふぞろい」流が一番合っていました。
最初はどのくらいできるものなのか
その答えはわかりませんが、同じような疑問をお持ちの方もいるかもしれないので恥ずかしながら私の場合を以下に資料として提示します。
二次の勉強をしていない状態で5月に受けたLECの模試では以下のような結果です。
事例Ⅰ | 事例Ⅱ | 事例Ⅲ | 事例Ⅳ | 合計 |
45 | 28 | 50 | 15 | 138 |
事例Ⅱはひどい点数です。でも事例ⅠとⅢは結構取れているのが…。事例Ⅳはまあ無勉なら仕方ないですね。
この時の感覚を思い出すと、無理やり与件文から骨組みとなる部分やキーワードを集めようとしていました。というのは見つけられる解答の要素が少なすぎて文字数が余ってしまうからです。
また自分の知識の引き出しから答えるものなのか、与件文から引っ張ってくるものなのか判断ができなかった感じです。
こんな状態だったのでまずは合格点付近(55点くらい)を取れるようにするのを序盤の目標にしました。
得点力の変化グラフ
二次試験の勉強は一次試験終了後から始めたので、およそ2か月半の期間で行いました。その間どのように得点力が変化していったのかをまとめてみました。
上は過去問をやっていく過程で記録していた得点の推移グラフです(点は見づらくてごめんなさい)。
一番左がLEC模試(5月、ノー勉)、一番右が試験本番の得点です。その間が7年分の過去問。
※なおこの過去問得点は「ふぞろい」シリーズを活用しての自己採点です。
事例Ⅰ~Ⅲの手ごたえと伸び方
最初から40~50点くらいは取れることもありますが、その先安定して60点を超えるのが難しかったです。これは一朝一夕ではいかないなという感じがしました。
また70点や80点を狙うのは現実的ではないことがわかりました(…最初のころは訓練次第で取れるようになるかもと思っていました。実際本試験で超高得点をとる方もいると思いますが、凡人が狙って出すのは無理なのでは…というのが私の結論です)。
事例Ⅳの手ごたえと伸び方
一方事例Ⅳは最初全く得点できませんでした。(10点台~20点台とか)。
ただシンプルに頻出の計算問題を練習するだけで一気に60点の力をつけられました。そこから先も応用的な演習を積めば70点を十分狙えると感じました。
得点力推移グラフからの対策案
事例Ⅰ~Ⅲは最初から50点前後取れるとしても、その後なかなか伸びないので早めに手を付け始めること。
事例Ⅳは最初はぜんぜんできないですが、シンプルに計算練習をすれば60点前後の力まで確実に上げられる。事例Ⅳだけは過去問演習よりもすぐに効果が出る計算問題集をやるべし。
事例Ⅰ~Ⅲの学習リスト、意識して取り組んだこと
事例Ⅰ~Ⅲ学習の中心に据えていたことは以下。
- 与件文と問題のパターンに慣れる→知識やノウハウよりも過去問演習繰り返し
- 合格者の答案をたくさん見る→「ふぞろい」
- 二次で必要な基礎知識を補強する→「全知全ノウ」合格ラインが見えはじめてから強化
それぞれ以下を意識して学習していきました。
1.与件文と問題のパターンに早めに慣れる
過去問に一つ一つしっかりと取り組むのも大事ですが、その前にざっと数年分目を通してしまう。
まず与件文は構成がだいたい一緒なので、単純にたくさん見ることでだんだんとアタリをつけながら読めるようになります。
その結果より多くの解答要素を拾い上げていくことができるようになりました。
合格ラインに近づいた手ごたえとしては以下です。
骨子を落とさないのはもちろん、肉付けとなるキーワードをたくさん見つけられるようになってむしろ削るくらいになったら。
(逆に最初の頃は解答欄を埋めることすらできないほど拾えていなかったです)。
問題もパターンは数種類なので、それに対する自分なりの答えのパターンも作っておけるようになります。例えば「施策→効果」この場合たいてい効果の字数は施策の二倍くらいがキーワード的によいとか、「最初に目的を書いて箇条書きで具体策」など。
もちろん題意最優先ですし「〇〇を考慮して」などの条件がついたりといろいろあるので、あまりパターン化したりこだわりを持ったりはしないように気を付けました。ただある程度自分の型を作っておかないと時間内に仕上げるのが難しいと思っていました。
AASでは無料で過去問と再現答案例が見れるので、与件文と問題のパターンを把握するのに活用できそうです。
言葉の意味を整理する
私の場合例えば以下意識して改善するようにしました。
- 「課題」と「問題」を混同しない。
- よく出てくる言葉「原因」「現状」「問題」「課題」「具体策」「効果」。これらをしっかり区別して使い分けること。
2.合格者の答案を見る
実際たくさんのA評価(60点以上)答案を見ることでなんとなく合格者ならこう書きそうだなというのがイメージできるようになりました。
なお他の教材や予備校の二次指導も少し見る機会がありましたが、現実的にふぞろいが一番いいと思ったのは以下の理由です(繰り返しになりますが)。
- キーワードで得点するという考え方がわかりやすく、リスクヘッジできていて実行しやすい
- 実際の合格者の解答と得点がたくさん見れるので信頼度が段違い
3.二次で必要な基礎知識を補強する
一番大事なのは過去問演習ですが、最後の最後得点力アップにつながる&安定感を増すのはやはり知識です。知識があることで切り口を安定して見出すことができます。
またノウハウをあらためて整理したものを読むこともためになりました。
いわゆる「全知全ノウ」です。もう一次試験のテキストなどはいらないので、この2冊でOK。
私は全知については事例Ⅰ~Ⅲそれぞれをさらに簡潔にまとめたメモを作りました。本そのままでは量が多すぎて実際に使える感じがしなかったので。
直前期にやったことリスト
どんな資格試験でも二週間前などの直前期を漫然と過ごさないように以下を行っています。
自分の現状・力を棚卸しするように再整理。合格ラインに及んでいない部分・課題をピックアップしなおし、一つ一つ潰していく。
課題それぞれをクリアするのに必要な時間を割りだし、残りの使える時間すべてを割り振ります。
以下私の二次試験二週間前くらいのリスト。やること自体は序盤に立てたリストとまったく同じになりましたが、優先順位を決めて割り振り直した感じです。実際はそれぞれ詳細に問題点や克服方法などメモしたものが加わっていましたが、他人が見ても意味不明なので簡略化。
課題 | 方法 |
本番慣れ、試験対応力向上、記述の練習 | 本番形式での過去問 |
切り口ごとの解答のパターン化 | ↑「ふぞろい」模範解答の分析をもとに、自分なりの作戦とパターン化 |
計算力UP、維持 | 合格点突破問題集、事例Ⅳの全知全ノウ |
知識問題用の知識整理 | スタディングのマインドマップ見直し、全知の読み流し |
その他ノウハウ・テクニック強化 | 全知全ノウやふぞろいのコラム、他人のファイナルペーパー眺め、関連書籍読了 |
まとめ
二次試験勉強で使用した教材⇒「ふぞろい」シリーズと事例Ⅳについては「計算問題集」を中心に。
二次試験の勉強時間⇒2か月半でおよそ120~130時間。一日平均1.7時間。
事例Ⅳの学習優先度⇒最優先。事例Ⅰ~Ⅲを合わせたよりも多いくらいでも。事例Ⅳ勉強のうち半分くらいは計算問題集。
採点基準不明な試験、結局何を頼りにするのがいいの?⇒実際の受験者合格者の得点が一番信用できる…つまり「ふぞろい」
科目得点イメージと本試験の結果⇒事例Ⅳで+αを稼ぎその貯金で事例Ⅰ~Ⅲの不確実さを補う作戦。しかし本試験は真逆の結果に。
最初(本格的な学習前)はどのくらいできるものなのか⇒事例Ⅰ~Ⅲは40~50点位取れる場合もあるが、事例Ⅳは10点台だった。
得点力(模試や過去問自己採点)の推移⇒事例Ⅰ~Ⅲはなかなか伸びない、安定してきたのは過去問4~5年分こなした後。事例Ⅳは計算問題集をやったら一気に合格ラインくらいまで伸ばせる(事例Ⅳだけは過去問よりもとにかく計算練習優先がいい)。
事例Ⅰ~Ⅲの学習リスト、意識して取り組んだこと⇒①まずは与件文と問題に慣れるため、たくさんの過去問に目を通してしまう。②合格者の答案に目を通してA評価の雰囲気を知る。③過去問で合格ラインが見え始めたら「全知全ノウ」などで知識とノウハウの補強。
直前期にやったことリスト⇒二週間前くらいになったら自分の課題を棚卸し。残りの使える時間を割り振ることで無駄をなくす。
コメント